月世界跋渉記

江見 水蔭(えみ すいいん、明治2 年8月12日(1869年9 月17日) - 昭和9年(1934年)11 月3日)は、小説家、翻案作家、雑誌発行者、紀行家、冒険家。本名:忠功(ただかつ)。岡山県岡山市生れ。
文学作品を皮切りに、通俗小説、推理小説、冒険小説、探検記など多岐に渡る分野に作品を残し、硯友社、江水社、博文館など数々の出版社で雑誌の編集発行に関わった。代表作に小説『女房殺し』、『地底探検記』、随筆『自己中心明治文壇史』、翻案戯曲『正劇 室鷲郎』など。
引力に因り月世界に墜落。探検者の気絶
「どうしよう。」
と思うまもなく、六人の月世界探検者を乗せた空中飛行船翔鷲号(しょうしゅうごう)は非常な速力で突進して月に落ち、大地震でも揺ったような激しい衝動をうけたと思うと、一行は悉(ことごと)く気絶して終(しま)った。
そもそもこの探検隊は目下日本で有名な否(いな)世界中に誰知らぬ者もないほどに有名な桂田(かつらだ)工学博士と、これもその道にかけては頗(すこぶ)る評判の月野(つきの)理学博士とによって主唱され、それに両博士の助手が二名、及び星岡光雄、空知晴次といういずれも中学四年生の少年とで組織されているので、一行は桂田博士が発明した最新式の空中飛行船に乗じて、この試運転の第一着手として、吾が地球から最も近い月世界の探検を思い立ったのである。しかしこんな冒険な一命を賭するような事業に加わるのは実に乱暴極まった話だが・・・・・
